辰本龍の憂鬱

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  ────1時間後。 俺は村の門の前で、荷物に不備が無いかをチェックしていた。 食料、寝具、救急用具、護身具、その他諸々…………よし。 俺は重たいリュックを担ぎ、軽く屈伸をした。 「…………行くか」 「ラジャー、隊長!」 後ろで満面の笑みで敬礼している馬鹿は、結局もう暫くは俺の旅に連れて行く羽目になった。 次の目的の街までは3日半か4日……その間はコイツのセクハラを警戒しなきゃならない。 最初から約束を『村に着くまで』ってしておけば、こんなに憂鬱な気分にもならなかっただろう。 全ては俺の判断ミスか……或いは九十九のゴリ押しのせいか。 「……さっさと行くぞ、犬飼」 「オッケー…………あっ!」 早く歩き出そうと急かすと、何か思い当たったのか犬飼が嬉しさの混じった声を上げた。 「辰本君、今初めて『犬飼』って呼んでくれたね!」 「…………さっさと行くぞ」 「ちょっ、何というデレツン! ……だが、そこがイイッ!!」 あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ この女マジで疲れる…… 旅の途中で棄ててやろうか本気で考えながら、村を出た俺だった。 『……お前は1人ちゃう、仲間は絶対にどっかに居る。 その意味が解ったとき、あの子はお前の支えになる筈や』 俺がこの言葉の意味を知るのは、もう少し後のことだ。
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