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それから1時間ほどは、ユッキーとの宿屋探しの時間だった。
道中にユッキーが話してくるのは専ら『ハジメさんの凄いところ』とか『ハジメさんと俺の武勇伝』とか、他人が聞いたらつまらないだろうなぁって話題ばかり。
しかし意外なことに、これが中々話していて楽しい。
「へぇー、ユッキーって半年前にギルドに入ったの?」
「あぁ、こっちに飛ばされてからすぐハジメさんに拾われてな。
あの人の強さに一目惚れだよ。
俺は一生付いていくぜ!」
「テラBLフラグ(笑)」
……とまぁこんな感じで、お互い全く噛み合うことのない楽しさを覚えていたというわけです。
でも会話の端々で、九十九さんとユッキーのギルド内での立ち位置みたいなものも知れたし、有意義といえば有意義な会話だった。
「──おっ、ここだここ。
この街で一番安い宿屋だよ」
話したり知識を貰ったりしながら歩いていると、ユッキーが歩行をピタッと止めた。
これが宿屋……クラウド一行とかスコール兄貴とかも泊まっていたファンタジーの代名詞……!
「案内ありがとう、ユッキー。
私はここで、アディオス!」
「おう、またなー。
…………っと、犬飼!」
私が宿屋にスタイリッシュ入館を披露しようとすると、ユッキーが思い出したように名前を呼んだ。
名前覚えててくれたのね(笑)
「何々ユッキー、どうしたの?」
「いや……あの金髪野郎のこと、ハジメさんから色々聞いてたんだけどよ、ハジメさんが物騒なこと言ってたんだ……」
物騒な……こと?
一呼吸の間を置いて、ユッキーは口を開いた。
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