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「聞かせてもらう……か。
断る、と言ったら?」
「無理矢理聞き出す」
余裕綽々のどや顔で立ちはだかるストーカー野郎の眼を真っ直ぐに睨み付け、敵意をさらけ出す。
この空間が本当に私の夢の中なのだとしたら……確か人間が実際に夢を見ている時間は、約10分。
圧倒的に、時間が少ない。
だが、とにかく情報が欲しい。
速攻でストーカー野郎を倒して、可能な限り情報を聞き出す。
「無理矢理聞き出す、ねぇ……」
「何か問題でもある?
それとも、女は殴れない?」
「まぁ、殴りたくはないね。
ただ、僕が言いたいのは……」
虚を突いて、一撃で。
そのためには、一歩で踏み込んで間合いを詰める必要がある。
右足を半歩引き、重心を落とす。
男が、瞼を綴じた。
「君の考えは……『不正解』だ」
────今だっ!!
右足で地面を蹴り、自分の出せる最高速で男の懐に潜り込む。
そのまま勢いを殺さず、男の顎に渾身の上段蹴りを……!
「喰らえぇぇぇっ!!」
右足が、弧を描く。
そして……私の右足は、男の体を『すり抜けた』。
「…………あら?
って、ぅわった……!」
当然、全力の蹴りを盛大に空振りした私は、自分のその勢いに振り回されてしまい、コケた。
地味に痛い……コケた痛みもそうだけど、主に心が痛い。
いやいや、それよりも……だ。
(今、すり抜けた……!?)
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