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形勢は、完全に逆転した。
地面に伏している犯人と、犯人に銃口を向けている私。
どちらが優勢かは一目瞭然だ。
犯人だと思っていたら雛森だったみたいなオサレ展開でない限り、私の勝利は揺らがないだろう。
しかも、少しずつだけどこの暗闇にも目が慣れてきた感じだ。
ほぼ見えないことに変わりは無いけど、うっすらとしたシルエットくらいは何とか見える。
さぁこの犯人をどう料理してやろうかと考えていると……犯人の口から言葉が一言だけ、洩れた。
「まっ、待って……!」
「 」
────絶句。
感嘆の言葉すら、出ない。
今のは聞き間違い?
私の幻聴?
それとも……まさか、本当に?
ジワリと、ピストルを握る手に汗が滲み出ている。
動揺が……隠し切れない。
「どうして……!?」
何かを言おうとする前に、部屋のランプに火が灯った。
ドアの方向を見ると、火の点いたマッチを持っている辰本君の姿。
どうやら、今まさに部屋に入って来たらしい。
辰本君はマッチの火をフッと吹き消し、私と犯人の2人を見て……予想していたかのような口ぶりでその言葉を放った。
「やっぱりか……『若葉』」
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