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「まずは犬飼、1つ聞くぞ。
九十九に『スモーカーズ』の話を聞かされて、どう思った?」
スモーカーズ?
あの噛ませ犬テリーマンが幹部を務めてた組織のこと?
どうって言われても……
「ネーミングセンスの残念さしか思い当たらない……」
「……そこは触れてやんな。
奴等の組織の幹部連中には、頭に煙草の銘柄が当てられとるよな」
「あー、確かに当てられてたね」
まぁ今のところパーラメントとかウィンストンとか、今一つパッとしないところばっかりだけど。
でも、だから何だって話だと私は思うんだけどなぁ。
辰本君は何が言いたいんだろう?
「……おかしいとは思わんか?
『俺らの世界の煙草の銘柄』が、『こっちの世界の組織』で幹部の名称として当てられてることを」
「あっ…………!」
そ、そうか……!
確かにその通りだ!
パーラメントもウィンストンも、私達の世界では当たり前のように各地に流通していた。
でもそれは『私達の世界の常識』であって、こっちの世界には全く当てはまる筈の無い常識なんだ。
「つまり……『スモーカーズ』を設立した奴は、俺達と同じように『飛ばされた者』じゃ。
更に、これは憶測じゃが、銘柄は組織内での地位や実力の序列分けとして扱われとると俺は思う」
単純明解なパズルを解くように、スラスラと正解に限り無く近いであろう推察を話す辰本君。
バーローもビックリですな。
そして……そこまで話し終えて、辰本君は再び若葉に目を向けた。
「……俺らの世界の煙草にはな、『わかば』って銘柄がある」
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