狗猫は衰退しました

12/14
前へ
/714ページ
次へ
  「…………」 辰本君が全て話し終えても、未だ若葉は口を開かない。 苦虫を噛むような表情を浮かべたまま、ジッと床を見詰めている。 かく言う私も、正直にぶっちゃけるとショックが隠せない。 短い間だったけど、若葉と一緒に旅をした時間は楽しかった。 友達と笑い合って馬鹿をするって感覚を、久々に堪能出来た。 でも……若葉は『スモーカーズ』だから、ギルドの『敵』だから。 「…………そう言えば、辰本君。 私が寝てる間に部屋を出たみたいだけど、何をしてたの?」 空気がどんより沈んできたので、気分転換に話を振ってみた。 「……お前は爆睡しとったから、気付かんかったんじゃな」 「…………何が?」 「宿屋の下の階から、何やら妙な声や物音が聞こえてきての、気になって様子を見に行ったんじゃ」 なーるへそ、だから若葉が襲ってきたとき部屋に居なかったのか。 ──次の言葉を聞いた瞬間、私はこの話に触れたことを後悔した。 「見に行ってみたら……下の階の客と従業員が全員殺されとった」 「えっ……?」 殺 さ れ て い た ? え、え、殺されていたって。 私が襲われる少し前に、下の階でそんな酷いことが……え? じゃあその犯人も、まさか……! 「ちっ……違う! アタシは誰も殺してねぇ!」 「分かっとるわ、落ち着け。 『あんな芸当』女の腕力で出来るレベルを遥かに越えとる」 あっ……若葉じゃないんだ。 ちょっと安心した。 でも、だとしたら誰が……
/714ページ

最初のコメントを投稿しよう!

945人が本棚に入れています
本棚に追加