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「…………」
辰本君が全て話し終えても、未だ若葉は口を開かない。
苦虫を噛むような表情を浮かべたまま、ジッと床を見詰めている。
かく言う私も、正直にぶっちゃけるとショックが隠せない。
短い間だったけど、若葉と一緒に旅をした時間は楽しかった。
友達と笑い合って馬鹿をするって感覚を、久々に堪能出来た。
でも……若葉は『スモーカーズ』だから、ギルドの『敵』だから。
「…………そう言えば、辰本君。
私が寝てる間に部屋を出たみたいだけど、何をしてたの?」
空気がどんより沈んできたので、気分転換に話を振ってみた。
「……お前は爆睡しとったから、気付かんかったんじゃな」
「…………何が?」
「宿屋の下の階から、何やら妙な声や物音が聞こえてきての、気になって様子を見に行ったんじゃ」
なーるへそ、だから若葉が襲ってきたとき部屋に居なかったのか。
──次の言葉を聞いた瞬間、私はこの話に触れたことを後悔した。
「見に行ってみたら……下の階の客と従業員が全員殺されとった」
「えっ……?」
殺 さ れ て い た ?
え、え、殺されていたって。
私が襲われる少し前に、下の階でそんな酷いことが……え?
じゃあその犯人も、まさか……!
「ちっ……違う!
アタシは誰も殺してねぇ!」
「分かっとるわ、落ち着け。
『あんな芸当』女の腕力で出来るレベルを遥かに越えとる」
あっ……若葉じゃないんだ。
ちょっと安心した。
でも、だとしたら誰が……
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