若葉

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「っっっ!?」 予想を上回る若葉のその言葉に、図らずも某親子喧嘩漫画みたいなリアクションをしてしまった。 私としてはあのしょっぱい味噌汁オチはある意味では神作だったと思ったりもするんだけど。 閑話休題。 さっきの言葉……若葉の両親を、このオッサンが? 「殺した……!?」 聞きたくもなかったその言葉に、嫌でも体が反応してしまう。 他人の私ですら戦慄してしまうのだから、当事者である若葉は一体どれ程の恐怖を── 「ハッハハハハハハハァ!!!」 突然、オッサンが噛ませ犬っぽい大きな笑い声を上げた。 思い出し笑いか?(※違います) 「『パパとママを殺した』? ハッハハハ……その言葉、お前が吐いていい台詞かぁ?」 「っ……黙れよ、黙れ!」 「なら若葉、そこのセーラー服の嬢ちゃんに教えてやれよ! 大好きなパパとママの名前、その2人から貰った名前をよぉ!!」 どこか含みのある乱暴な言葉で、オッサンはそう言った。 いや、若葉の両親の名前って……申し訳無いけど私も読者も大して興味無いんですが。 なんて言ったら確実にKYになるから黙っておこう。 ……だが、若葉が口を開かない。 悔しそうな表情を浮かべて、私とオッサンを交互に見ている。 涙を溢れるくらい瞳に溜めて。 「若葉、もしかして……」 自分の名前だけじゃなく、大好きだった両親の名前も。 『思い出せない』……のか?
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