若葉

5/26
前へ
/714ページ
次へ
「ところで嬢ちゃん、もしかしてお前……若葉のことを『友達』だとでも思ってたのか?」 オッサンのその言葉は、厭らしいほどに含みがあって、私を馬鹿にするような口調で。 それが無性に……腹立たしい。 2日間、一緒に旅をした。 たったの2日間。 ただ、それだけ。 それが私と若葉の関係。 短すぎて、薄っぺらすぎて、何の歴史も思い出も無い関係。 ……それでも、私は。 「……思ってるよ。 若葉は私の『友達』だって」 「っ……犬飼……」 「だから……若葉のことを馬鹿にするアンタが、大っ嫌いだ」 チラと若葉を横目で見ると、瞳に溜まっていた涙がついに溢れて、幾つも頬を伝っていた。 …………そうだよ、私はどうしてショックを受けていたんだ。 『若葉がスモーカーズの一員』? どうせ、そこのオッサンに弱味を握られたり、唆されて殆ど強引に加えられたに決まっている。 百歩譲って、若葉が自分の意思でチームに入ったとしても、それが『若葉=悪人』じゃない。 私と若葉は……『友達』だ。 私は若葉を信じる。 若葉だって、きっと私を── 「若葉は嬢ちゃんを『友達』とは思ってねぇだろうがなぁ」 ──アカン、私キレそうや。 「ハアアアアア!!? アンタに私と若葉の熱々な関係の何が分かるんですかぁ!? いつ若葉が私を友達じゃないとか言ったんですかぁ!? 何月何日の何時何分何秒の地球が何回回った時ですかぁぁ!!?」 「犬飼、落ち着け。 あと『何』使いすぎじゃ」 ※『何』がゲシュタルト崩壊した方々、申し訳ございません。
/714ページ

最初のコメントを投稿しよう!

945人が本棚に入れています
本棚に追加