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そこで話を区切ると、オッサンはバッと自分のシャツを捲った。
なんだ、見られて興奮する人か。
とか罵ってストレス発散でもしてやろうかと思ったが、オッサンの『それ』を見た私にそんな余裕はとても生まれそうにない。
「まさか、と思ったぜ。
『この俺が』ただのガキの攻撃で血を流しちまったなんてなぁ。
懐かしいだろぉ……若葉?」
オッサンの鍛え上げられた腹筋に刻まれた、痛々しい刺し傷の痕。
この傷を、若葉が……!?
「あの時の若葉の目、それはもう綺麗なもんだったぜ?
泣きも怯えもしねぇ、ただ俺への殺意だけが燃えていやがった。
それがランドセルも卒業してねぇガキの目だと思うか!?」
「止めろ、セブンスター!
話すな、もうそれ以上……!」
膝を落として踞りながら、若葉は必死にオッサンに訴えている。
でも、オッサンは止めない。
グリグリと若葉の傷口を抉る。
ドス黒い過去を、ドス黒い笑顔で楽しそうに話し続ける。
「オッサン、アンタ……!」
「村人の死を悲しむよりも、悪人である俺達から逃げるよりも!
そいつは『復讐』を選んだ!
まともな神経じゃねぇ選択だ!」
「止めろ……止めて……!」
「だから俺はコイツを生かした!
若葉の中に渦巻く狂気は、磨けばすぐに光る悪魔の原石だ!
みすみす捻り殺すには惜しい逸材だったからなぁ!」
……止めない、まだ止めない。
いや、分かっていたことだ。
コイツは今ここで、若葉の全てを明かすつもりだ。
若葉を、壊すつもりなんだ。
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