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「──っっ……!?」
思わず口を押さえて、油断すれば一気に決壊して溢れそうな怒りや同情の涙を、辛うじて堪えた。
だって……だって!
もし本当に、若葉がそんなことを考えているんだとしたら!
「若葉が嬢ちゃんと会ったのは、本当にただの『偶然』だ。
『偶然』出会って『偶然』仲良くなっちまった。
だから嬢ちゃんは若葉に襲われたんだよ……『偶然』な」
若葉が私を襲った理由って……!
「最初に言っただろ?
若葉はとっくにイカれてる、もう正常な判断なんか出来やしねぇ。
少しでも親しくなっちまったら、攻撃せずにはいられねぇのさ」
『自分と親しい人は殺される』と思い込んでいるから……!?
「そうすることでしか、コイツはあの日の惨劇のフラッシュバックから逃れられないからだ」
────全部、理解出来た。
理解出来て、初めてこう思う。
若葉のその考え方は……理由は、本当に『イカれている』と。
若葉は、ただ怖かっただけ。
自分の両親や親しい人が無差別に殺された場面を、どうしても思い出したくなかった。
思い出したら、自分の心が壊れてしまうから。
だから……全て忘れた。
嫌な過去を無理矢理捩じ伏せて、『若葉』として生きようとした。
私を含め新しく親しくなった人を襲った理由も、それだ。
大切な人が殺される恐怖が、頭の隅から消え去らない。
だから、親しくなった人と離れる必要があった。
そのために襲って、相手が自分を拒絶するように仕向けた。
二度と自分が傷付かないように、若葉は自ら『イカれた』んだ。
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