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私の切なる願いを汲んでなのか、やっと足首を解放してくれた。
畜生……貴重なパンモロシーンをこんなオッサンなんかに……!
「ハッ……だがまぁ、確かに若葉の親を殺したのは俺だ。
そういう点では責任があるな」
大切かどうか微妙な何かを喪って傷心していると、オッサンは再び若葉をギロリと睨んで……微笑。
コイツ……次は何をする気だ?
オッサンは力無く床に座り込んでいる若葉に数歩歩み寄ると、懐に収めていた『それ』を取り出し、若葉の足元に転がした。
「若葉……千載一遇のチャンスをくれてやる。
これを逃せば最後だ、お前は一生俺を殺せねぇだろうよ」
見下した笑みを浮かべて、若葉にそう言い放つオッサン。
──若葉は、足元に転がっている『短刀』の柄を握った。
「若葉……!?」
「……そうだ、若葉。
『あの日の続き』をすればいい。
その短刀を使って……さぁ!」
短刀を握りユラリと立ち上がった若葉を見ると、また一段と笑顔を歪ませてオッサンは言った。
両手を広げて、子供の微弱な牙を受け入れるようなポーズで。
「若葉ぁ! 俺が憎いだろ!
なら、その短刀で殺してみろ!
俺の命を、一撃で奪い取れ!!」
「セブン……スター……!!」
────あぁ、駄目だ。
若葉の目、本気だ。
本気でオッサンを憎んで、本気でオッサンを殺したいんだ。
当然だ、両親の仇なんだから。
私がもし若葉の立場だったなら、私も同じように短刀を握っていたかもしれない。
若葉の行為を止める理由なんて、きっと…………無い。
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