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感情の揺れ幅を抑え切れずにか、若葉は再び瞳に涙を溜めた。
頬を濡らしながら私やオッサンを睨む若葉は、とても弱そうで……とても苦しそうで。
「……アタシ、狂ってる。
パパのこともママのことも、自分の名前すら思い出せない。
なのに……お前がアタシのことを理解出来るわけないだろ!?」
「…………そうだね」
確かにそうだ。
私には若葉の苦しみを完全に理解することは出来ない。
私の両親はしっかり生きてたし、何不自由無く私を育ててくれた。
ごく普通の、ありふれた幸せ。
それを無償で与えられていた。
だから、私には理解出来ない。
──でも、解るんだ。
「若葉……『笑ってた』よ」
本当は1人が寂しくて、今すぐにでも誰かに泣き付きたいって。
狂ってる自分を受け入れてくれる人を探してるんだって。
ねぇ、若葉?
今ならそれが解るんだよ。
「旅の途中、何度も笑ってた。
凄く楽しそうに笑ってたじゃん。
私もね、楽しかったよ?
若葉と一緒だと、凄く楽しい!」
「…………犬飼」
私は若葉の肩に置いた手を離し、目の前でバッと広げて。
そして、笑って宣言した。
「大丈夫だよ、若葉!
仮に若葉が死神だったとしても、私は絶対に死なないから!
何回襲われても、オッサンに命を狙われても、絶対に!
だって私、主人公(笑)だし!」
「だから──」
そこまで言い切ると、一呼吸だけ間を置いて、ありったけの望みを最後の言葉に乗せて……言った。
「一緒に戦おう、若葉」
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