945人が本棚に入れています
本棚に追加
予想斜め上どころか更に大気圏も突破しそうなくらい予想外だったオッサンの言葉に、戸惑いつつもコクッと小さく頷いた若葉。
オッサンは満足気に頷くと、また若葉の頭をわしわしと撫でた。
「……なぁ、嬢ちゃん」
「えっ? あ、ハイ!」
ちょ、いきなり話し掛けるなよ!
軽くテンパって宇宙戦艦ヤ○トの敬礼しちゃったじゃないか!
辰本君の汚物を見るような視線を右から左へ受け流し、オッサンの言葉に耳を傾ける。
「若葉は俺の部下だったが、まだ殺しも盗みもさせちゃいねぇ。
ギルドの支部かその辺の自警団にでも引き取らせてくれねぇか?」
真っ直ぐ私の目を見て、そう頼み込むオッサンの表情は。
私の気のせいかもしれないけど、ほんの少し寂しそうに見えた。
オッサンは、若葉のことを『娘』って言っていた。
もしかしたら……オッサンは若葉を引き連れている内に、いつしか本当の娘のように思ってしまっていたのかもしれない。
だからこそ、一切の犯罪を若葉にさせようとはしなかった。
狂気を育ませようと拾ったのに、育ませまいとしていた。
だとしたら、オッサンのさっきの微笑みは、自分の娘が復讐心から解き放たれたことへの喜び……?
「…………分かった」
オッサンは『悪』だ。
オッサンのやったことは、決して許されてはいけない。
それは私も分かってる。
それでもオッサンは……恨まれるって知りながら、今日まで若葉を食べさせてきたんだ。
実は心の奥底では、いつも若葉のことを心配していて────
最初のコメントを投稿しよう!