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────その時だった。
──ダァアンッ!!
「さて……とぉ。
お前ら、そろそろ死んどくか?」
破壊する気なのかと疑いたい程に強く壁を殴る音と、目の前の男の溢れそうな殺意を宿した言葉が、穏やかに静まりつつあった空間を緊迫感で支配したのは。
「おっ……おい、オッサン!
お前、若葉を引き取りに来ただけだって言ってたじゃんか!」
この状況は、非常に危うい。
瞬時にそう判断した。
可能性が低いとしても、どうにかして場を治める必要がある。
少しでも攻撃の隙を与えたら……下手したら、一撃で終わる。
それくらい、コイツは危険だ。
「あぁ……だが気が変わった。
どんな形だろうが、部下が組織を裏切ったんだ。
なら俺は上に立つ者として、筋を通さなきゃならねぇ」
「そんな勝手な都合で……!」
「だったら、歯向かってこい。
さっきの威勢が嘘じゃねぇなら、死に物狂いで抵抗してみせろ」
オッサンが言葉を発する度、重くのし掛かる『覚悟』の差。
辰本君や九十九さんからは感じることの無かった、獣のように濃い無尽蔵の殺意と強度。
最後の言葉を終えると、オッサンが再び右手を振り上げる。
そして、強く握り締めた。
次は……頭を撫でるんじゃない。
私達を攻撃するつもりだ……!
「い、いいい犬飼……!!」
(っっ、ヤバい……!)
避けなくちゃ……でも、避けたらオッサンの拳が、若葉にっ……!
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