『鬼神』と『金龍』

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  年齢が2桁になった頃には、既に身長が160を上回っていた。 殴り合いになれば、相手が中学生だろうが勝てる自信があった。 でも母さんに『理由の無い暴力は悪者のすること』だと言い聞かせられていたから、自分から喧嘩を吹っ掛けることはしなかった。 3年経つと、身長はまた更に20センチ伸びていた。 体格では大学生にも見劣りしない程にまで成長していた。 金色の派手な髪が気に入らない。 冷めた目付きが気に食わない。 何でも出来るのが妬ましい。 理由は様々だが、喧嘩を売られる数が爆発的に増えた。 でも、俺は負けなかった。 相手が族だろうが大人だろうが、多人数だろうが。 少し拳を奮えば、あっという間。 自分で自分の異様な強さに驚いたくらいだ。 九十九と出会ったのも、丁度その時期辺りだった。 ……2年半、くらい前になるか。 俺がこの世界に来たのは。 この世界に来て初めて盗賊相手に拳を奮った時に──戦慄した。 異常すぎる。 数年前までの自分が赤子に思えてならない、飛躍し過ぎた膂力。 半分以下の力でも、元の世界での全力を上回っていた。 その事実を理解してから、人間を相手にするのは極力避けた。 已む無くそういう事態になったとしても、決して全力を出すことはしないと心に留めた。 強すぎるからだ。 俺自身、この身体能力のピークを未だ計り知れないからだ。 興味はあるが反面、知ってしまうことが怖くもあった。
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