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────最後の言葉が、ゴングの代役を成した。
次の瞬間、セブンスターが足元にあった椅子を蹴飛ばしてきた。
木造の椅子が一直線に俺に飛んでくるが、速度は然程無い。
おそらく威嚇目的だろう。
こんなジャブを貰ってやる優しい俺ではなく、余裕のタイミングで向かってきた椅子を天井目掛けて蹴り上げた。
椅子が消えて、広がった視界には──やはり、セブンスターの左の拳がすぐ近くまで迫っていた。
椅子を囮にしての速攻。
この程度の奇襲は予想通り。
だが、これは……!
(速いっ……!?)
速かった。
予想していたよりも、ずっと。
この世界に来てから今までに見た中でも、確実に一番速い。
一瞬動揺したが、身体は反射的に動いてくれた。
無理矢理重心を左に傾けて、その拳を避けようとする。
右頬を、拳が掠める。
それと同時に、赤い液体が頬から洩れる感触。
だが、怯む気は更々無い。
傾けた重心を利用し、がら空きの脇腹を左フックで狙う。
一発で倒せる威力は出せないが、当てて主導権を──
「らぁぁあ!!」
「っっっ!!?」
しかし、左拳を握り締めるよりも僅かに早く、腹に衝撃が走った。
セブンスターの左膝が、俺の腹に入ったようだ。
ビリビリとした鈍い痛みが走り、少し力を抜けば両足が地から離れ宙に浮きそうな衝撃。
中途半端な態勢からの攻撃ですらこの威力かよ……!
危機を察知し、部屋の端に寄って間合いを取った。
──その時、天井まで蹴り上げた椅子が床に落ちてきた。
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