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俺とセブンスターとの間合いは、もう1メートルも無い。
後ろには下がれない。
横に逃げても押さえられる。
前にいるセブンスターは、右腕を引いて撃つ態勢に入っている。
あっ、これはヤバい。
「…………死ね」
嫌な汗が、ブワッと吹き出る。
全身の毛が逆立つような感覚。
マジで避けないと、これは……!
「っっ……くそっタレ!」
咄嗟に思い付いた方法は、空手の『三角蹴り』。
壁を蹴り、その反動と勢いを利用して上段蹴りを繰り出す技。
……まぁ、確かそんな感じ?
セブンスターの攻撃が飛んでくるより先に、背後の壁を思いっきり蹴り、その反動でセブンスターの頭上すれすれを飛び越えた。
空中で何とか姿勢を整え、地面に着地する際も受け身を取る。
そして即座に立ち上がり、後ろに2歩下がって間合いを取った。
こういう時は、自分の運動神経にただただ感謝する。
「……無茶するなぁ、金髪。
こんな狭い部屋でよぉ」
「…………本当にな」
いや、実際無茶だったと思う。
自分でもこんな綺麗に成功すると思ってなかったし。
こちらに向き直りながらそう言うセブンスターは、思わぬ回避法で攻撃を避けられたことに、むしろ薄く笑っていた。
相変わらずの、歪んだ笑み。
探しても存在しない。
自分と同等の身体能力を持つ人間なんて、見付からない。
でも、確かに存在したんだ。
それが今、目の前に。
だから……嬉しく感じる気持ち、解らなくもない。
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