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「何笑ってんだ、金髪?」
「……お前こそ」
異常、と言うだろうか。
第三者が今の俺達を見たら、そう口にするだろうか。
まぁ普通に考えたら、殴り合いの最中に2人共が笑ってるだけでも一般人には理解し難い筈だ。
それが殺し合いともなれば異常と言われても仕方無いと思う。
だから、理解されなくてもいい。
心臓が激しく脈打つ。
昂る感情とは裏腹に、神経は今や極限まで研ぎ澄まされている。
吐息による空気の振動まで、目に映ってしまいそうな程に。
こんな感覚を味わうのは、俺以外誰1人としていなくていい。
(────静かだ)
いつの間にか、焦りは失せた。
明鏡止水、というやつだろうか。
荒々しさは消え、深夜に相応しい静寂が全てを包み込んでいる。
セブンスターも、先までと何かが違うと察したのか、足を動かさずジッと俺を見据えている。
…………動揺するな。
一瞬たりともブレるな。
相手が動くのを待て。
生物は攻撃に転じる際に、防御を犠牲にしている。
その隙を狙えば、必ず外さない。
だから見ろ、観察しろ。
限界まで、眼光を飛ばせ──
──セブンスターの足が、僅かに前に傾いた。
(…………貰った!!)
間髪入れず、こちらも重心を前に傾けて1歩踏み込む。
俺の動きを見て、セブンスターの表情から初めて余裕が消えた。
動作を途中で止め、両腕を固めて守りの態勢に入ろうとしている。
だが、僅かに遅い。
俺の攻撃の方が……速い!!
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