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「テッ……メェェ……!?」
……ようやく、今日初めて。
その男が、苦痛に顔を歪ませた。
俺に分かる余地など無いが、今の感触と激突音だ。
骨は折れなくとも、両腕と背中に相当なダメージを負った筈だ。
その証拠に、セブンスターの口の端から『血が垂れている』。
「ハァ……ハハッ……!」
それよりも…………驚いた。
自分で自分に驚いた。
今までとはまるで違う感触。
弱い奴を捩じ伏せるのとは違う、強さや固さを全て砕いて蹂躙するとてつもない破壊。
そんな、触れたことの無い感触。
(ハハッ……半端じゃない。
これが俺の全力かよ……!?)
落ち着きながらも、高揚する。
自分を抑えられるかどうか不安になるくらいだ。
この力なら勝てる。
僅かに、でも確実に、身体能力は俺が勝っている。
しかも、セブンスターは先の一撃で両腕が痺れている筈だ。
迂闊に攻めてはこれないだろう。
劣勢は一転、優勢になった。
「……ハッ、止めだ止めだ」
…………ただ、1つ。
気掛かりがあるとすれば。
それは、この男がまだ──
「あーあー、認めてやる。
ガチンコで殴り合っても、俺じゃお前には勝てねぇだろうよ。
……だから、ここからは──」
まだ、本気を出していない。
本気で殺しにきていないという、拭いきれない不穏。
だが……ここから先は──
「『能力』を使わせてもらうぜ」
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