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────予想通り。
一撃が、顔面にヒットした。
脳を揺さぶる程の衝撃。
並々ならぬ破壊力を纏った拳は、人の顔の原型を歪ませ、無理矢理表情を苦痛の色に塗り替えた。
体内を巡っていた血液が、鼻から口から流れ出す。
その威力たるや……大の男を宙に舞わせるには、充分だった。
ただ1つ、俺の予想と違う部分を挙げろと言われたら。
やはり、顔面を殴られて吹っ飛ばされたのがセブンスターではなく『俺だった』ということだろう。
(ッッッ!!!?)
つい1分前の腹に膝を入れられた時の鈍痛などとは比べられない、全身を走り抜ける激痛。
その後、再び全身に衝撃を与えた壁との容赦無い激突。
気を失いそうな痛みに思考を支配されながらも、辛うじて床に膝を着くことだけはしなかった。
──コッ
小さな白い何かが、床に落ちた。
…………俺の歯だ。
「っっ……ハッ……!!?」
何 が 起 き た ! ?
攻撃したのは俺の筈だ。
アイツは攻撃を外した後だった。
顔面に一撃を叩き込まれるのも、衝撃で身体が宙に浮くのも、血を流すのも、歯を折られるのも。
全部全部……俺じゃなくて、奴が味わうべきだった筈だ。
何故、俺がそれを味わっている?
(俺は、いつ殴られた……!?)
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