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「随分と混乱してるじゃねぇか?
そんなにタネが解らねぇか?」
フラフラと覚束無い足取りで立ち尽くしている俺を、セブンスターは見下した目で眺めている。
もう奇襲を仕掛けてはこない。
おそらく心の中で、負けることは無いという余裕があるのだろう。
今すぐにでも殴り掛かって余裕を砕いてやりたいが、この状態では踏み込むことすら辛い。
「なぁに、簡単な話だ。
お前の右の裏拳に合わせて、俺がカウンターを撃った。
『ただそれだけだ』」
『ただそれだけだ』?
いや、どこが簡単な話だよ。
ただそれだけなわけあるか。
俺の攻撃に合わせてカウンターを放ったことくらい理解出来る。
俺が理解出来ないのは、あの態勢からカウンターを放って俺の攻撃より速く当てる、その有り得ない『時間の矛盾』だ。
本来なら不可能な筈なんだ。
不利な態勢で後手に回りながら、カウンターを極めるなんて。
「……ふざけ……とんのか?」
「ふざけてねぇ……って言っても納得しねぇんだろうなぁ」
「だったら──」
その言葉の後……セブンスターは若葉に短刀を渡した時のように、両腕を広げてガードを解いた。
「もう一発、殴ってみるか?」
「!!?」
「あぁ、安心しろ。
『カウンターは撃たねぇ』。
お前が俺に勝てねぇってことを、これで証明してやるよ」
頭の血管を引き千切られるような感覚だった。
(コイツ……嘗めやがって!!)
不遜で傲慢なその言動、とにかく目の前の男をブン殴りたいという俺の怒りと衝動を駆り立てるには充分過ぎた。
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