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1秒間の空白……?
『空白』?
何かが、自分の頭の中で今までの疑問が駆け巡る。
裏拳に合わせられてカウンターを喰らったことも。
右拳を放っている瞬間に視界から消え失せたことも。
『時間的に』不可能だった。
でも……でも、もし。
『1秒だけ自由に使えたら』?
「確かに、身体能力だけで見れば俺はお前には勝てなかった。
あの裏拳もさっきの右拳も、本来なら避けられなかっただろうよ」
少しずつ、自分の中で結論が見え始めていた時──
ガッと、顔面を鷲掴みにされた。
「まっ……!!」
「それを覆すのが、この能力だ」
────ダァァンッッ!!!
そして、後頭部から勢い良く壁に叩き付けられた。
轟音を脳内に直接流されたようなその感覚と痛みに、意識を手離しそうになった。
両腕を上げる力すら、今の俺にはもう残されていない。
「 」
コエはデているのか?
自分の身体の自由が、効かない。
「例えば、お前に1秒間の猶予を与えられたとしよう。
だが、俺はそこに更に『1秒間の猶予を付け足すことが出来る』」
腹に膝……最初の一撃より遥かに重い膝を入れられた。
胃から逆流しそうな何かを、抑えこむことが出来なかった。
「早いタイミング、速い攻撃。
そんなもん、俺には無意味だ。
何故なら、それがどんなに完璧な一撃だろうが『1秒間の空白』があれば、それを避けて逆に反撃を与えることだって容易い」
床に広がる血溜まりが誰のものか……それも判断デキナカッタ。
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