走れユキト

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ちょっと気取ってポケットに手を突っ込みながら言ってみた。 返事が無い、ただの覗き見野郎のようだ。 いや、頼むから何かリアクション取ってくれよ、誰か知らんけど。 これ端から見たら俺ただの中二病みたいじゃねぇか。 別に恋したくねぇぞ俺は。 「オイ、バレバレなんだよ。 それとも俺にビビってんのか?」 「…………カハッ! 誰がビビってるって? エ?」 おっ、返事してくれた。 そろそろ心が折れそうだったぞ。 バレバレの監視……いや、むしろわざとバレるようにしてたか。 多分、気付くかどうかで俺の実力を値踏みするつもりなんだろう。 声が聞こえてから数秒後、1人の男が建物の影から姿を現した。 黒いズボンに黒い長袖のシャツ、髪の色も真っ黒。 服の上からだから分からないが、体格は中々なイイ男だ。 僅かに灯る街灯の光に照らされて見えた顔には、一本の太い刀傷が痛ましく刻まれている。 何処と無く見た目が厨臭い、てか噛ませ犬臭い。 「俺の追跡を見破るたぁ……まぁわざとバレるようにしてテメーの実力を見てやっただけだが」 うん、それはさっき俺が地の文で説明したから。 わざわざドヤ顔で言わんでいい。 「カハッ、まぁこの俺自らが相手してやるんだ、光栄に思え。 俺の名は、ハイライト・田口。 セブンスター様の配下にある戦闘部隊の分隊長だ、カハッ!」 田口、お前幹部なのかよ。 モブキャラだと思ってたわ。 ま、俺も軽く挨拶してやるか。 「……海山行人、ギルドDランク最強の男だ」
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