走れユキト

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田口が混乱して動きが鈍っている今がチャンスと思い、今度は前に1歩軽く地を蹴ってみた。 それはもう、赤子のハイハイ並の微弱な力で蹴ってみた。 すると、あら不思議。 あっという間に田口の『目の前』まで移動出来ましたとさ。 「なァ……!?」 「フンッ!!」 「え? 何お前今ワープした?」とでも言いた気な田口の鳩尾に、全力で掌底を叩き込んだ。 「ゥがっ……!!」 突然に、心臓付近に強烈な衝撃が走ったんだ。 怯まない方がおかしい。 まぁ、隙が出来たのなら好都合。 スッと半歩程後ろに下がり、再び鳩尾にキックを放つ。 それは、ノーガード状態の田口にモロに直撃し、その顔色を苦痛で歪めるまでに至った。 連撃でそこそこダメージを与えたことに満足した俺は、また後ろに軽く1歩下がった。 そして最早お約束であるように、3メートル程の距離が出来た。 「テメー、何モンだ……!?」 もう田口につい先程までの余裕は微塵も無い。 俺に対する優越感は完全に消え、警戒心を剥き出しにしている。 それもその筈、何も知らない田口から見た先の攻防での俺は、1歩だけで数メートルの距離をワープしたかのように見えたのだから。 当然、俺はワープなんてしない。 と言うか、出来ない。 なら、俺は何をしたのか? 「あ? さっき言っただろ。 ギルド最強のDランクだ」 答えは極めてシンプル。 『物凄く速く動いた』だけだ。
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