走れユキト

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「ゼェゼェ……さ、さっさと倒れちまえよカス野郎!」 「ハァハァ……カハッ! 誰がテメーのヘナチョコパンチで倒れるかってんだよ!」 根比べと言うか一進一退と言うか……これは膠着状態と呼べる状況なのではないだろうか。 間違い無く、優勢なのは俺だ。 俺の攻撃は田口に百発百中だし、逆に田口の攻撃は未だに俺に掠りすらしていない。 だが困ったことに、そもそも俺は身体能力に恵まれていない。 世界の補正で上昇はしているが、ハジメさんや金髪のように一撃で相手を蹴散らすような、桁外れな破壊力は生み出せない。 しかも田口、避けられないまでもガードするタイミングは掴みつつあるようで、決定打らしい一撃が中々決まらないわけだ。 (こっちが疲れてくるぜ……もう10発くらい追い込んでみるか) 闘いの行く末に不安を感じつつ、更に田口をボッコボコにしようと再び地面を蹴ろうとした。 その時──── (────なっ……!!?) …………聞こえた。 いや、聞こえてしまった。 決して聞こえる筈の無い、聞いてしまう筈じゃなかった声が、今。 確かに、俺の鼓膜を震わせた。 『何故ここに?』 そうだ、何故ここに──── 「ぎゃああああああ!!! オッサンに追い掛け回される趣味なんか無いのにぃぃぃぃ!!!」 「いやぁぁぁぁぁああ!!! 犬飼ぃぃぃぃぃィィイ!!!」 何故ここに、お前らがいる。
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