945人が本棚に入れています
本棚に追加
「ゼェゼェ……さ、さっさと倒れちまえよカス野郎!」
「ハァハァ……カハッ!
誰がテメーのヘナチョコパンチで倒れるかってんだよ!」
根比べと言うか一進一退と言うか……これは膠着状態と呼べる状況なのではないだろうか。
間違い無く、優勢なのは俺だ。
俺の攻撃は田口に百発百中だし、逆に田口の攻撃は未だに俺に掠りすらしていない。
だが困ったことに、そもそも俺は身体能力に恵まれていない。
世界の補正で上昇はしているが、ハジメさんや金髪のように一撃で相手を蹴散らすような、桁外れな破壊力は生み出せない。
しかも田口、避けられないまでもガードするタイミングは掴みつつあるようで、決定打らしい一撃が中々決まらないわけだ。
(こっちが疲れてくるぜ……もう10発くらい追い込んでみるか)
闘いの行く末に不安を感じつつ、更に田口をボッコボコにしようと再び地面を蹴ろうとした。
その時────
(────なっ……!!?)
…………聞こえた。
いや、聞こえてしまった。
決して聞こえる筈の無い、聞いてしまう筈じゃなかった声が、今。
確かに、俺の鼓膜を震わせた。
『何故ここに?』
そうだ、何故ここに────
「ぎゃああああああ!!!
オッサンに追い掛け回される趣味なんか無いのにぃぃぃぃ!!!」
「いやぁぁぁぁぁああ!!!
犬飼ぃぃぃぃぃィィイ!!!」
何故ここに、お前らがいる。
最初のコメントを投稿しよう!