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まだ100メートル以上は離れているが、見間違いではない。
広く長い一本道を此方に向かって走っているのは、田口を倒したら探す予定だった犬飼嶺子だ。
しかもその添加物として、背中に若葉らしき人物を背負っている。
よく目を凝らすと、その後ろには犬飼を追い掛けていると思わしき男が数人いるじゃないか。
「待てコラァ、変な服!!」
「取って食うぞ、変な服!!」
「可愛がってやる、変な服!!」
「だぁぁれぇぇがぁぁ変な服だよモブキャラ共がぁぁぁあっ!!
イケメン以外に私を追い掛け回す権利なんか無いわーい!!」
「反論してないで逃げろって!!
いやぁぁぁぁぁああっっ!!!」
どうしよう。
全力で関わりたくないんだが。
しかも何でこっちに来るんだよ。
距離的にあと10秒くらいで合流するじゃねぇか。
どっかで脇道に逸れろ。
こっち来んな。
そしてうるさいから黙れ。
田口もポカーン(゚д゚)とした顔で走ってくる謎のトラブル女を凝視する余り、無防備になっている。
まぁそりゃ混乱するよ、目の前で人1人背負った女が絶叫しながら走ってきてるんだから。
出来れば一生見たくなかったわ、こんなカオスな場面。
…………待てよ?
田口の警戒心が犬飼に向いている今の隙なら、後頭部にでも一撃を与えれるんじゃね?
ナイスだ、犬飼!
そうと決まれば早速、まだ犬飼と田口が俺に焦点を合わせていない間に素早く攻撃を──
「あれ、ユッキー!?
おーい、私だよー!!
皆の狗猫ちゃんですよー!!」
前言撤回。
俺アイツ苦手だわ。
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