走れユキト

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「こっちだ、田口ィ!!」 だとしたら、俺が今すべき行動はただ1つ。 即ち、田口の注意を引くこと。 おそらくだが、あと2秒くらいで犬飼は速攻を仕掛ける筈だ。 そして当然、田口もそれをガードしようとするだろう。 だったら、田口がガードの構えに入る前に俺が攻撃を仕掛ければ、田口はどっちの攻撃をガードするべきか混乱するに違い無い。 視界に映る2つの人影。 1つは、俺の声に反応してガード状態を緩めてしまった田口。 もう1つは、また一段と加速してこちらに向かってきている犬飼。 「グッ……!!?」 隙を見せた田口の頭部に、犬飼の跳び膝蹴りが迫る。 それに合わせて、俺も上段蹴りを田口の顔面目掛けて放った。 前方から俺、後方から犬飼。 双方からの速攻、田口のガードが間に合う筈も無く。 「らぁぁあっ!!」 「狗猫キーーック!!!」 「待っ……!!」 田口が何か口に出すよりも早く、俺の上段蹴りと犬飼の跳び膝蹴りが同時に田口の頭部に直撃した。 思い掛けずクロスボンバー気味に入ったこの攻撃で、タフマンこと田口はついに気絶した。 田口が地面に倒れ込み、ようやくくたばったかと肩で息をしながら安堵していたが…… 「会いたかったよ、ユッキー! 早速で悪いけど助けてくれ!」 「いきなり下ろすなよ犬飼! アタシを1人にしないでー!」 「落ち着け、お前ら。 とりあえず色々ツッコませろ」 「このタイミングで下ネタですかユッキー……無いわー」 「下ネタじゃねぇよ!」 田口なんかより、コイツらの方が遥かに鬱陶しいかもしれない。
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