番犬さんが通る

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  『────お兄ちゃん、起きて。 朝だよ、遅刻しちゃうよ? お兄ちゃん、起きて。 朝だよ、遅刻しちゃうよ? (※以下1分間リピート)』 「ふわぁぁぁ……」 朝日が輝く清々しい朝。 お気に入りの目覚まし時計の声で俺の1日は始まりの鐘を鳴らす。 『萌え萌え☆ボイス目覚まし時計ver.妹』の甘ーいロリボイスが、惰眠に堕ちた俺の精神を覚醒へと導いてくれるのだ。 番西賢也(バンザイ ケンヤ)、21歳。 職業は自宅警備員。 9年後には魔法使い。 初めまして、俺です。 『番犬(※自宅警備的な意味で)』という不名誉極まりないアダ名で親しまれ……まぁ親しんでくれる友達とかいないけど(笑) 「あー…………眠てぇ」 只今の時刻は6時半。 半開きの瞼を擦りながら呟くが、2度寝という選択肢は無い。 良い子の皆さん規則正しい生活を心掛けましょう。 キッチリと布団を畳み、顔を洗うべく洗面所へ向かう。 今なら誰も使っていないだろう。 「賢也君、おはよう」 「あっ、おはざーッス。 朝早くからご苦労さんです」 廊下を歩いていると、頭を丸めた住職さんに挨拶をされた。 まぁいつものことだから俺も気にせず挨拶を返す。 ここらで既に分かった人もいるだろうが、我が家は『寺』である。 代々僧侶を生業として生きてきた家系なんだとか。 勿論のこと親父も僧侶。 そして予定では俺が次期当主だ。 まぁ今は修行そっちのけで毎日をダラダラ生きているわけだが。
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