番犬さんが通る

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  (しっかし……髪伸びたなぁ) 洗面所にて、今や肩に乗るくらいの長さにまで伸びた自分の赤髪を指で弄りながら思った。 そろそろ赤ロン毛も飽きたし……いっそバッサリ短く切って髪色も変えてみようか。 ピンクのモヒカンとか。 うん、それは無いな。 適当に寝癖を直して1本に束ね、歯を磨いて顔も洗い眠気が覚めたところで、お次に向かうは家庭の肝であるキッチン。 俺がガキの頃に母親が病気で他界したため、朝昼晩3食の飯は全て俺が作っている。 家事は俺の得意分野だ。 ところで、これは完全にどうでもいい話なんだが。 よく『目玉焼きには何付ける?』って質問を聞くが、やはり世間の定番は醤油なのだろうか? マヨとかケチャとかも悪くない、ソースもまぁアリ。 でも俺はオリーブオイル。 などと、マジでどうでもよかったことを考えている間に、鮭が良い感じで焼けたではないか。 野菜を適量添えて皿に盛り付け、これで朝食は完成。 さて、身嗜みも整えて朝食作りも終えて、これで朝のルーティンは一通り終了──ではない。 まだ最後に1つ、朝のこの時間にすべきことが残っている。 そしてその最後の1つこそ、俺にとっては最も重要と言えよう。 朝食作りを終えた俺はキッチンを飛び出し、逸る気持ちを足に乗せ速歩きで廊下をズンズン進む。 その足は、可愛らしい字で小さく『琴里の部屋』と書かれた和室の襖の前で止まった。 ──そう、兄の朝の日課と言えばやはり『妹を起こす』でしょう。
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