番犬さんが通る

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ここで紳士な俺ならノックをして入っているところだが、この戸は障子張りのためそれは不可能。 ノックした日には破れる。 と言うことだから、外から名前を呼び掛けるのが基本のコンタクトとなるわけだ。 「琴里ー、朝だぞー」 そこそこの声量で声を掛けるも、反応は一切無し。 まぁこれはいつものこと、さして特別なことではない。 声が駄目なら、アレでしょう。 肩を揺するしか無いでしょう。 いや下心とかじゃなくてね? 寝顔が見たいとかじゃなくてね? 即断即決がモットーの大和男児である俺は、若干の躊躇も無く襖をスターンと勢い良く開けた。 畳の八畳間の中央で、スヤスヤと気持ち良さそうに寝息を立てて、小動物のように布団にくるまって微動だにしない少女。 高校生にしてはやや幼い顔立ち、あちこちがピョンピョンと跳ねたショートカットの黒髪、犬と猫がプリントされた非常に可愛らしい薄桃色のパジャマ。 女神、ここに降臨。 女神、天使、天女、美の究極系、原石、神々しき光、星空の瞬き、無限大な夢の後の何も無い世の中ですら輝く一輪の華。 妹の殺人級な可愛さと美しさは、幾つもの最高系の言葉を並べても未だ足りているとは思えない。 この子の笑顔は、おそらく戦争の抑止力にも成り得るだろう。 はっ、いかんいかん。 ちょっと寝顔をガン見し過ぎた。 「琴里、おはよう。 学校に遅れちまうぞ?」 「すぅ…………んにゅ?」 妹の頭をポンと軽く叩くと、瞼がうっすらと開かれた。 未だ眠たそうに瞼を擦りながら、妹──番西琴里(バンザイ コトリ)は目を覚ました。image=472495215.jpg
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