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──そこは、私がこの世界に来てから……いや、私が産まれてから初めて見る『村』だった。
生きていた頃(なんか混乱を招きそうな言い方だけど)は、思えば『街』しか見た事が無かったし、都会っ子な私は田舎っぽい場所に行きたいとも考えなかった。
木造の柵に囲まれた小さな空間。
その殆どが自然の産物で組まれた小さな建物。
そこで暮らしている田舎っぺーな雰囲気たっぷりの村人。
どれもこれも、人生で初めて見る光景で、初めて感じる空気。
何よりこの村は、私がこの世界に来て初めて『人がいる』事を実感出来る場所なんだ。
「ふわぁ……本当に人がいる!
なんか感動してきた……」
柵の外から村を眺めている、ただそれだけで楽しい。
それ以上に、なんか……嬉しい!
そんなwktk状態の私を、辰本君はジッと凝視していた。
あら? 私に惚れちゃいました?
「とりあえず友達から……」
「はぁ?」
「すみません何もありません。
いや、辰本君が私を見てるから、どうしたのかなぁって」
「あぁ……少し驚いただけじゃ。
意外な反応じゃったからな……」
ふむ、成る程。
私のことだからもっと酔狂的且つスタイリッシュなリアクションをすると予想していたのか。
そんなわけねーだろ(笑)
私だって感動した時くらい素直に感動するわ。
「さぁさぁ、いつまでもボサッとしてないで早く入っちゃおう!」
「言われんでも手続きに──ってちょっと待て、アホォ!!」
何か言ってる辰本君を無視して、私は柵をよじ登った。
「おい、不審者が柵をよじ登って侵入しようとしているぞ!」
「なに、引っ捕らえろ!」
そして、その10秒後には門番に捕まっちゃいました、まる。
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