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「さてっとー、まずは自己紹介をしちゃおっかな。
九十九一(ツクモ ハジメ)、覚え易くてえぇ名前やろー?」
その人──九十九さんはニコッと笑いながら、これまた軽いノリで自分の名前を言った。
九十九と一……足したら百か……まぁどうでもいいけど(笑)
「はい、次はお嬢ちゃんの番ね」
「あっ、犬飼嶺子です」
「オッケー、嶺子ちゃんね?
えぇなぁ、名前通り子猫みたいに可愛らしい女子高生!
おにーさん可愛い女の子には目が無いんよー、あはは?」
フッ……中々に見る目があるな、九十九とやら。
褒めてやろう!
「とまぁ、口説くのは後にして。
君も『俺らと同じ』なんやろ?」
…………俺『ら』?
『ら』って……つまり?
「えっと……九十九さんも、この世界の人間じゃないと……?」
「大正解ー、おにーさんも死んでこの世界に飛んできたんよ。
付け加えるなら……」
『付け加えるなら……』
一旦言葉を句切り、九十九さんは辰本君を指差した。
「リュウが『生きてた』頃を知る……旧知の仲や」
「…………」
指を差された辰本君は、普段より更に怖い目付きで、九十九さんをキッと睨んでいた。
そうか、辰本君がこの村に戻って会いたい人って……この人のことだったんだ。
「何しに来たん、リュウ?
どうせ面倒な話なんやろうけど、内容次第で考えたるよ?」
まるで辰本君の全てを見透かしているかのように、薄く笑いながら話し掛ける九十九さん。
何となくだけど、この人の関西弁妙に色っぽい。
辰本君は椅子から立ち上がると、私と九十九さんを交互に見て……静かに言った。
「この女……お前に預ける」
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