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────お前に預ける。
何の前触れも無く、辰本君の口はその言葉を発した。
「……まぁ、構わへんけど?
飛ばされた奴を保護するんも俺の『仕事』の1つや──」
「ちょ……ちょっと待った!」
このまま黙っていたら、辰本君と九十九さんに勝手に決められそうだったので、ここは無理矢理でも割り込んでいかなくては!
第一、急すぎる。
ブリーチの展開ばりに急すぎる。
何故いきなり主人公兼ヒロインの私が売り飛ばされるのか。
(※売り飛ばされてはいません)
「勝手に決めないでよ!
私がどうするかなら、私に決める権利があるでしょ!?」
「あぁ? んなもん知らんわ」
「知らっ……!?
辰本君、酷すぎるよ!
いくらなんでもそれは……」
口では怒鳴りながら、頭の中では理解してしまっていた。
間違っているのは、私だ。
そう、私がどこでどうなろうと、それは辰本君には関係無い。
私達が一緒に旅をしたのは1日、たったそれだけの時間で信頼関係など生まれる筈も無く。
元々は『寝泊まり出来る場所まで連れていく』という口約で、別にそれが破られたわけでもない。
辰本君を咎める権利なんて、今の私には無いんだ。
「…………いや、ごめん」
ただ謝るしか出来ない私は、人に頼らなきゃ生きていけないただの非力な子供だ。
解ってはいても……内から洩れる何とも言えないこの寂しさ。
くそっ……いつの間にこの小説はギャグカテを脱したんだ……!?
(※最初からです)
「…………ふん、じゃあの」
あまりにも素っ気ない一言を私と九十九さんに投げ付け、辰本君は私達の視界から消えた────
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