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────夜空に浮かぶ月を何度も眺めては、何度も疑問に思う。
この世界の月、元の世界の月。
どちらが綺麗なのだろうか?
色や形は違うのだろうか?
……て言うか、月あるんだ。
死後の世界にも月あったんだ。
異世界なのに言語が同じの時点でご都合主義だとは感じていたから今更気にしないけど。
……などと、俺──九十九一は、おそらく読者の大半が微塵も興味無いであろう疑問に対して無駄な葛藤を繰り返していた。
この世界に来てから、もう相当な時間を過ごしてきた。
元の世界との数多ある変化の中、個人的に好ましく思えた相違点が幾つかある。
その内の1つが、気候。
この世界は四季の変化に乏しく、冬でも気温が10を下回ることは滅多に無い。
逆もまた然り、真夏でもない限り気温は30を越えない。
年がら年中快適な気候だ。
まぁ、夏の終わりの夜にもなればさすがに風が肌寒くもあるが。
それでも厳しくは感じない。
「…………さて、と」
──そろそろ動くか。
1人そう呟く俺。
俺がこの村に来た理由。
それは複数抱えている『仕事』を消化するためだ。
1つは、嶺子ちゃんのように突如飛ばされてきた者を早急に発見、保護すること。
まぁ、リュウは例外だけどね。
そして……もう1つ。
こちらが主な仕事だ。
灯りの少ない夜道、門に向かって1人歩を進めた。
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