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──トンネルの向こうは不思議な街……もとい森でした──
ふいに、どこかで聞いた事のあるフレーズが頭の中で何度も何度も反響し続けた。
鎮まれ、私の頭の中の千尋。
お前は黙って名前奪われて旅館で風呂掃除でもしていろ。
……さて、おふざけは一旦休止。
私は急いで立ち上がり、グルッと一回転して自分がどんな状況下にあるのかを確認した。
視界に映るのは、ただひたすらに自らの存在を自己主張するように生えている草木の大群のみ。
動物の囀りは音だけで、全く姿を見せてくれない。
やはりオタクは警戒されるのか、と現実の非情さに落胆した。
次に、私の状態を確認。
セーラー服を着ている、つまりは通学途中だったのだろう。
その証拠に、私はついさっきまで自分の鞄を枕に寝ていた。
鞄を枕に…………ハッ!?
慌てて鞄の中を確認すると、これでもかと言わんばかりに詰め込みまくったゲーム機やカセット達が見るも無惨な残骸と化していた。
漫画も傷だらけで破れたりしててとても見れたものではない。
「な、何をするだぁぁぁっ!!」
十中八九は自分の責任なのだが、そう叫ばずにはいられなかった。
結局、無事だったのは携帯電話と充電器だけだった。
神よ、私に死ねと言いたいのか?
そんなに歴史の教科書でどや顔を決め込んでいたキリスト様の絵に落書きしたのが赦せないか?
イーノックは助けるくせに主人公である私は救わないのか?
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