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「さぁぁぁて……攻撃がストップしたということは……次はワタシのターンかい、ガール?」
「っっ!!」
ぞくりと、背筋に悪寒が走るのを脳で理解した。
(ヤバい、避けないと……!)
反射的にと言うべきか本能的にと言うべきか、とにかく私は初めて『避ける』という行動を選んだ。
振り上げた右足が地に着いたのとほぼ同時に、そのままその右足で地面を蹴り横に飛んだ。
後ろには跳ばずに、横にだ。
相手の金属製のロッドが私の頬を掠めたのは、その直後の事だ。
「っつぁ……!?」
「ほぉ……避けたか、グレイト」
これは、確信にも似た予感。
接近戦では──勝てない。
私は直ぐ様テリーマンとの距離を開け、相手の右手に握られているロッドに目を向けた。
…………やっぱりだ。
『刃が仕込まれている』。
もし……私が横に跳ばずに後ろに跳んでいたら?
あの刃は、今頃──
「理解したかな?
ガールが勝てない理由を」
「っ……!?」
頬から首へと伝う朱色の滴にも、私は意を介さなかった。
その一瞬の隙すら致命的なのだと学習したからだ。
「確かに身体能力は高い。
加えて、脚技に特化している点も素晴らしいと言える。
脚の比重は腕の約3倍……威力もそれだけ高く、女性でも大の男をノックアウト出来るだろう。
…………バァァァァット」
テリーマンはロッドを私に向け、ニヤリと笑った。
「威力が高い技とは、それと比例してリスクも高い。
これはバトルにおいて鉄則。
それを知らなかった……『戦闘の経験が無さすぎる』ことが、君がワタシに勝てない理由だぁ」
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