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『戦闘の経験』
確かにそれは、私が持ち合わせていない大きすぎる欠落だ。
どんなに高い身体能力も、優れた武術の数々も、使い手によってはそんなもの気休めでしかない。
私はまだ、この2つを自分のモノとして扱い切れていない。
『持て余している』んだ。
さっきまで私が勝てたのは、ただ相手が弱かっただけだ。
付け焼き刃でも倒せる程に。
なら……私は勝てないのか?
どんな抜きん出て高い身体能力を持っていても、初心者が上級者にスポーツで勝てないように。
指の数も人を殴っていない私は、戦闘術に手練れたテリーマンには絶対勝てないのか……?
さっきからシリアスパートなのにテリーマンは駄目だろ(笑)
というアレはさて置き……つまり今の私じゃ、正攻法で勝つことは厳しいってわけだ。
畜生、私は主人公だぞ!
補正で何とかしろよ補正で!
(※出来ますん)
どっちだよ!
────ふと、自分の腰にズシリとした重みがあることに、むしろ何故今まで気付かなかったのか?
ホルスターに『ピストル』を差していることに、私は気付いた。
「さぁぁぁて、ガールが動かないなら再びワタシのターン──」
「私に……近付くなぁっ!!」
「!? ……おぉぉぉっとぉ?」
ピストルの銃口を、テリーマンに……人に…………向けている。
たったそれだけなのに、ゲームのそれとは別物すぎる緊張感。
指が、微かに震える……!
駄目だっ……こんなんじゃ当たるわけがない……!
それを察したのか、テリーマンは再び微笑を浮かべる。
「ガールに撃てるのか?
それとも人を撃った経験が?
ハッハァ……あるわけ無いかぁ」
「……ナメるな……!」
トリガーに、指を掛けた。
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