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────刹那の静寂。
柔らかい風が吹き、そしてその風が止んだと同時に……
真っ先に、テリーマンが動いた。
「アッハッハァ!!
大人を嘗めるなよ、ボーイ!!」
素早い、そして隙も無駄な動きも殆ど無い踏み込み。
その一歩は、2メートルの距離を一瞬で縮めるには充分過ぎた。
そのフットワークを右腕の突出に上乗せし、刃を仕込んだロッドは一直線に辰本に迫る。
一般人では目視すら難い速度で。
……そして、無情にも。
ロッドの刃は、辰本君の左脇腹に突き刺さった。
「おい……歯ぁ食いしばれ」
…………が、刃が辰本君の脇腹に突き刺さる瞬間、抑揚の無い声が静かに辺りに響いた。
そして、刃が脇腹を抉るより数寸早く、辰本君の右腕がテリーマンの腹に埋まった。
────メリッッ!!
人を殴った音とは到底思えない、鈍い悲鳴が最初に響き。
続いて、パキパキと骨の軋む音が幾つも鳴り響いた。
次の瞬間……テリーマンの体は、フワリと宙を舞った。
(えっ…………マジで?
こんなの、本当にあるの……?)
純粋に、そう疑問に思った。
今、私の目の前で繰り広げられている光景は、一般常識から著しく掛け離れているからだ。
『殴って人間が吹っ飛ぶ』なんてことは、漫画や小説の世界にしか無いものだと思っていた。
たった一発のパンチで、大の男が軽々と宙に浮き上がり、そのまま5メートル以上は先にある大木に背中から激突し。
ズルズルと力無く、テリーマンはその場に崩れた。
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