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──なのに、何故だろうか?
いや、常識の通用しない相手だということは既に理解したが。
それでも、ピストルを構えている私の指は震えているのに、銃口を向けられている方が『全く』動揺した素振りが無いなんて。
それどころか、またフッと笑みを溢したと思うと、驚くべきことに私に背を向けた。
武器を構えている私に、だ。
「ほら、撃っていいよ?
大丈夫、君を食べるつもりなんて全然無いからさ」
「……っ……!?」
一瞬、ピクリと指が動いた。
……が、直ぐ様躊躇した。
確かに、コイツは自分と無関係の人を殺して、喰った。
疑いの余地も無く『異常者』だ。
でも……私は、ギルドの人間でも無ければ、傭兵でもない。
手に握っているピストルだって、モンスターを退治するために一時借りている物だ。
……撃っていいのか?
無関係の相手を、借り物の暴力で蹂躙していいのか?
私は、本当に…………
「……そっかぁ、撃たないんだ。
いや……『撃てない』のかな?」
クスリと、薄い笑い声。
少年は私に背を向けてケタケタと笑いながら、床に散らばる人間の腕だった肉塊を掴んだ。
「…………止めろ……!」
訴えの声が聞こえたのか、少年は私に向き直った。
肉塊を、掴んだまま。
そして……初めてドス黒い微笑を浮かべて、少年は──
────口を、開けた。
「喰うなぁぁぁぁぁあっ!!!」
パァンッ────
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