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「────おい、おい!」
「…………あ」
どれだけの時間が経っただろう。
1秒か、1分か、1時間か。
とにかく私は、部屋に駆け付けた辰本君に声を掛けられることで、ようやく思考を取り戻した。
「来てくれたの……?」
「銃声が6発聞こえた。
……お前が撃ったんか?」
「銃……声……?」
ぼんやりと口を動かしていると、ズシリとした重みが右手に乗っていることに気付いた。
あれ?
私、何でピストルなんか……
この匂い……血の臭いに混じって香る、硝煙の……硝煙の……!?
「ぅあぁぁぁぁぁ……!
た、たたた辰本君……!」
「おい、どうした!?」
「どうしよう……どうしよう!?
私……私、ごめんなさい……!
違うの、だって私は……!」
思い出した。
ほんの少し前の出来事なのに……私は否定することに必死で。
そうだ、私は撃ったんだ。
それも、1人の人間に6発も。
肩に、腹に、頭に、弾丸を。
『人を殺した』んだ……!
「ごめんなさい……ごめんなさい辰本君……ごめっ……!」
「おい、落ち着け!」
「だって、だってアイツが!
アイツが……食べてて……!」
「分かったから、興奮するな!
いいから、ゆっくり深呼吸しろ」
私は半ば狂乱状態に陥り、自責の念に押し潰されまいと叫び暴れてもがき続けた。
辰本君が隣に居なかったら、多分もっと狂っていただろう。
知らなかった。
『死』に触れることが、こんなにおぞましいなんて。
「…………酷いなぁ。
人を殺そうとした上に、指差して責任転嫁するなんて」
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