148人が本棚に入れています
本棚に追加
彼女は家の近くまで付いて来た。
しかし、後僅かという距離で、「今夜は出歩かないでください」と言い残し、何処かへ消えてしまった。
まるで嵐のような少女だった。
誰でもなく、ただ一人。
俺は小さく溜め息を吐いた。
自宅と言っても誰かがいるわけではない。
俺は一人暮らしだ。
高校生での一人暮らしというのはまるで夢のような話だが、実際は孤独を思い知らされるかのごとく寂しさに苛まれる。
俺はそう感じる。
だから、騒がしいのが苦手だ。
家に帰ると現実に引き戻されたような気がする。
俺はベッドに倒れ込んだ。
妙に瞼が重い。
「あ、買い…物…行か…ない…と……」
意識は徐々に落ちていく。
一瞬、ほんの一瞬。
あの子の顔を思い出した。
あんなに楽しそうに笑っていた。
あんなに悲しそうに笑っていた。
その顔を思い出す。
何処かで見たことがある気がする。
彼女と同じ表情。
同じ空気。
けど、思い出せない。
考えるのは止めよう。
きっと疲れているんだ。
そうに違いない。
俺は瞼を閉じると同時に意識を手放した。
最初のコメントを投稿しよう!