148人が本棚に入れています
本棚に追加
月の下。
闇夜に包まれている中、ポツンと赤い光が二つ浮かんでいた。
誰もいない公園の中で、赤い瞳を鋭く光らせていた。
どのくらい経っただろう?
あぁ、面倒臭い。
そんな思考に駆り立てられ、私は凛と冷酷に佇んでいた。
暗黙、静寂、沈黙。
しかし闇の中で無数の影が蠢いていた。
こんな“人形”に付き合っている暇など無かった。
所詮は出来損ない。
月光にも照らされず、私はそれらを見下ろす。
ただ不気味に蠢く姿は人の形には見えなかった。
例えるなら無数の手。
手という解釈さえ間違っているのかもしれない。
けれど、そんなことはどうでもいい。
いや、はじめからどうでもいい。
「道を開けよ」
殺意を込める。
一瞬、それらは怯んだように下がった。
私は振袖から一枚の楓の葉を取り出す。
「二度も言うほど、私は優しくはありません。
この警告に対しての反応が違えたことにより、敵と判断し――」
楓の葉を口元に向ける。
「排除します」
最初のコメントを投稿しよう!