1話…惚れました!

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「おにぎりどうでした? 力作だと思ったのですが…」 「んあ?」 あぁ、そういえば感想を聞かせろとか言っていたっけ… 「うん、美味かった」 「良かった。 愛情と愛憎と悲哀を込めて作ったんですよ?」 「何故愛情で止めなかったんだ!?ある意味危ない域に達しているぞ!!?」 「だってお一人で食事していたから…」 何故一人で食べていると作っている時点で気づいた!? 作るのは少なからず俺の学校に来る以前だろう!? 「それでも悲哀の感情はこめて欲しくは無かった!!」 「…す…すみません」 「へ?」 親に怒られた、今にも泣き出しそうな子供の表情だった。 潤んだ瞳を俺から逸らし、俯きがちな顔に前髪が掛かっていた。 俺は彼女の小ささに驚く。 身長とか体格とか、そんなことではなく、純粋に小さいと感じた。 同時に小動物のような雰囲気と、何かに脅えているようにも見える。 「ご、ごめん。きつく言い過ぎた」 そんな風には全く思わなかった。 けど、それ以外に彼女がこんな表情を浮かべる理由が分からなかった。 さっきまであんなに笑っていたのに。 今はこんなにも… 「…怒っていないですか?」 呟くような小さな声だった。 震えた声も、見上げる顔も、見惚れるほど、綺麗だと思った。 それどころではないはずなのに。 あまりにも彼女は現実離れしていて、彼女の全てを絵に描いたように見せる。 「あぁ、うん。別に怒ったわけじゃない」 そう答えることしか出来なかった。 「えへへ」 柔らかく笑みを浮かべる彼女に安堵さえ覚える。 たった一日も経っていないというのに、俺は彼女のペースに完全にはまっていた。 けど、悪い気はしない。 ポンと彼女の頭に手を置いて目を逸らしつつも撫でてみる。 初めて女の子の頭を触ったが、正直に言おう。 触り心地は抜群だ。 髪は細いし、柔らかい。 変態だとか、そんなことを言われても何も言い返せないが、触り心地はスゲー良い。 それだけは断言しよう。
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