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父親が死んだのは、私が十の頃で。 顔は父親、中身は母親。 あの頃父親に愛されなかった女にとっては私は、ただの塵みたいで視界に入れたくない存在だった。 女は直ぐに再婚をした。 父親に雰囲気は似ているが、眼は濁って薄気味悪く笑っている男と。 あの顔を見るだけで、声を聞くだけで気持ちが悪くなりそうだ。 二人は初めは幸せそうで。きっと女は愛されていると…愛されているのだと思ったのだろう。 だが、男は女を見てなど、愛してなど居なかったのに。 男が見ていたのは、愛したのは… 私だったのに。
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