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大陸北部に見える山脈、この山脈の一角に火竜の山はあった。
山の中腹まで登ると洞窟が見える、入り口はここしかない。
火口からの溶岩と熱波により焼け焦げた道や壁が続いているが、所々人工的に作られたと分かる痕跡が残されている、この地が溶岩に支配される前は、まだ人が住んでいたようだ。
洞窟を抜けると溶岩の海を囲うように断崖絶壁が続き、そこに沿うように細い道が続く開けた場所に出た。
「暑い~、酷い暑さだなぁ」
顎から汗を滴り落としながらキッドが愚痴る。
「まだお目当てのお宝は見つかってないぞ、もう帰るのか?」
ディックはイタズラな笑顔を向けてキッドに言った、その顔にも汗が噴き出している。
「冗談!名うてのキッドと呼ばれるトレジャーハンター様がお宝も手に入れずに帰れるかよっ」
などと軽口を返すが、あまりの暑さに遂に我慢出来なくなったのだろう、持ってきた水を勢いよく飲み始めた。
「ところで赤竜ってのはどんな奴なんだ?」
「さあなぁ、ドラゴンって言うからにはデカイんじゃないか?」
「別名ファイアードラゴンと呼ばれています、恐らく炎を自在に使いこなすのだと思いますよ」
レミィが話に入ってきた、ノーランもそれに続く。
「マトモに戦っても勝ち目はないさね、あたいとディックで何とか時間を稼いで、レミィがそれをサポート、その間にキッドが宝を奪う、生き残る術はこれしかないよ」
「生き残る……って、そんな大袈裟な」
ノーランは豪快な行動と見た目によらず博識で、冗談を言うタイプではない、それが分かっているからキッドの声にも不安の色が見えた。
「それだけ強大な力を持っているってことさね、あたいも直接お目にかかったことはないけど、昔ドラゴンの子供と戦ったことがあってねぇ、それはもう子供とは思えない強さだったよ」
ノーランはさらっと恐ろしいことを言い放った。
「で……でもよ、リターンロープだって持ってきてるし、大丈夫だよな?」
「そうですね、【テレポート】を妨害する魔力障壁も張られていないみたいですし」
キッドの意見にレミィが賛同するが、ノーランの表情は固いままだった。
「作戦会議はそこまでのようだ、敵さんのお出ましだぜ」
ディックが剣を抜き払い、身体の半分を覆える盾を構え戦闘態勢に入ると会話の終了を告げた。
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