竜王

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「サラマンダーか!」 キッドが叫んだ。 頭はトカゲ、身体は蛇のような鱗に覆われ、手には槍を持ち背中には小さな羽根が生えており空を舞っている、その数6体。 「レミィ!援護頼む!」 言うが早いかディックは一気にサラマンダーの群れに突進し間合いを詰める。 レミィはすぐに魔法の詠唱を始める、魔力が集まりレミィの周囲を何本もの透明な古代文字の帯がうねりだした。 キッドは間合いを詰めすぎないように一定の距離を保ち、ディックの援護に回る。 ノーランは肩にかけている自身の身体よりも大きい巨大な鋼鉄のハンマーを振りかぶり、気合い一閃── 勢い良く地面に叩き付けた。 隕石の衝突を思わせるような衝撃と轟音を響かせ、砕け散った石畳の破片がサラマンダーの群れに飛んでいく。 ノーランの牽制により回避行動を強制されたサラマンダーの群れは、攻撃態勢に入るのが遅れた。 前に出ているサラマンダー二体はノーランの攻撃を避けると、攻撃の対象を目前に迫るディックに絞った、大きく息を吸い込み吐き出したそれは、炎を纏ってディックに襲いかかる。 それにも構わず盾を構えながら突進していく、絶え間なく吐き続けられるブレスに盾の表面が焼けつき、緩やかな丸みを帯びた形状により弾かれた炎が赤髪を焦がす。 一気に接近すると突進の勢いそのままに左のサラマンダーに剣を突き出した。 硬い鱗を貫き深々と剣が刺さり、サラマンダーが苦悶の雄叫びをあげる。 同じくブレスを吐き出していた右のサラマンダーはブレスを止め、槍での攻撃に切り替えた。 素早く横に回り込み斜め上から突き出された矛先がディックの首筋に迫る、だが避けようとはせず串刺しにしたサラマンダーに足をかけ、突き刺した剣を力任せに引き抜く。 右のサラマンダーが突き出した槍はディックの首から数センチの場所で停止している。 勿論サラマンダーが攻撃を止めたわけではなかった、槍を持った腕から短剣が二本生えている、キッドが投げたナイフが刺さっていたのだ。 ディックは剣を引き抜きざま横凪ぎに払いサラマンダーの首をはね飛ばし絶命させる。 すぐさま向き直り血飛沫を上げ悶絶するサラマンダーに、引き抜いたばかりの傷口目掛けて蹴りを放つ。 致命傷を負ったサラマンダーは蹴りをまともに受け崖下の溶岩に吸い込まれていった。
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