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次の瞬間、左側面より飛んでくる魔力により精製された大きな火炎がディックを捉えた。
サラマンダーが放った中級炎魔法【ブレイズ】がディックを包み込み躍り狂う。
数秒後、炎が霧散しディックが姿を表す、その身体は僅かな火傷を負っただけで殆どダメージは無い、その理由は身体を覆う半透明な青白い魔力の装甲【レジスト】にあった。
ディックが【ブレイズ】の直撃を受ける間際、レミィが逸早くサラマンダーの攻撃を察知し魔法をディックに放った。
【レジスト】により一時的に魔法に対する耐性が上がったディックには、中級魔法など効果が無いに等しい。
だがいくら無鉄砲なディックでも一人ならこんな戦い方はしない、無謀な突撃も信頼出来る仲間がカバーしてくれる、だからこそディックは思い切り剣を振るうことが出来た。
「油断しすぎだぞディック」
残るサラマンダーに注意を向けつつキッドが言う。
「これから火竜と一戦交えようっていうんだ、こんな雑魚に体力を消耗するわけにはいかないだろう」
ただでさえ暑さで体力を奪われていくのだ、短期決戦を仕掛けるディックの判断は間違ってはいなかった。
【レジスト】を掛け終え、次の魔法詠唱を始めたレミィの目に、自分へと接近してくるサラマンダーの姿が映る。
ディックに気を取られていたレミィはサラマンダーの接近に気付いていなかった。
サラマンダーが大きく口を開け息を吸い込むと口の中に炎が渦巻く、その炎が吐き出されレミィに届く前に魔法の詠唱を終わらせるのは不可能、素早く判断し詠唱を止めて回避行動を取ろうとしたレミィの前に、小さな影が立ち塞がった。
背丈はレミィより低いが、どっしりとした佇まいと存在感は頼もしく、見た目より何倍も大きく見えたのはノーランだった。
サラマンダーがブレスを吐き出すと、鎧と同じく蒼い装飾が施された巨大な盾で弾き返すノーラン。
身体を楽に覆い隠せる盾の重さに加え、ブレスによる逆風で構えながらの移動が出来ない。
ノーランはレミィの方を振り向きウインクをしてみせた。
全てを察知したレミィは、ディックに掛ける予定だった魔法をノーランに放つ。
【プロテクション】
同じ炎でも魔力で精製されたわけではないブレスの火炎は、【レジスト】では効果が無い、【プロテクション】で肉体の耐性を上げることにより防げるのだ。
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