古代の秘宝

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─────数日前 フォレシア大陸南部にある小さな村、入り口から正面に見える木造の宿屋、この大陸に集まる冒険者達の休息と情報収集の場である。 「ディック、面白い情報が入ったぞ」 ディックと呼ばれた赤い短髪を逆立てた男、腕を除き上半身を覆う赤い軽鎧の中には鍛えぬかれた筋肉を纏っており、剥き出しの腕には幾多の死闘の末に刻まれた無数の傷痕が残っている。 意思の強さを感じさせる瞳、無骨で大きな鼻、真っ直ぐ一文字に閉じられた口、精悍な顔つきだがどこか優しさも感じさせる。 「どうした?美味い店でも見つけたか?」 振り返り言葉を発した先に目を向けると、そこにはディックよりも一回りほど小柄な青年が丸めた紙を持ってこちらに歩いて来るところだった。 明るい茶色に染めた髪、整った顔立ちをしているが美形というよりは男前と言った方がしっくりくる。 ディックとは対称的に身軽な布製の黒い衣服に身を包んだこの男の名はキッド。 名うてのキッドの通り名を持つトレジャーハンター。 「違う違う、新たなお宝ちゃんの在処が分かったんだよ」 声のトーンが高い、もうお宝の事を考えているんだろう、目が輝いている。 「お宝より強い奴と闘り合う方が楽しいんだがなぁ」 「相変わらずだな」 キッドは持っていた紙をテーブルに広げた。 その紙には大陸の地図が描かれていた、ここを拠点としている冒険者なら誰もが持っているものだ。 大陸北東部に山脈がある、その入り口付近を指差しキッドが言った。 「この山に古代の秘宝が沢山あるそうだ、剣、ナイフ、弓、杖…… これらの貴重な武器を集めるのが趣味な奴がいるんだとよ、ソイツからお宝をかっさらうってわけだ」 「その情報は確かなのか?」 「俺が間違った情報を持ってきたことがあるか?」 「この前は宝が沢山眠ってるって遺跡に行ってきたなぁ、確かに宝箱は沢山あったな、中は全て骸骨の化け物だったっけ? その前の遺跡近くの海にクラーケンが住み着いてるっていうのもガセだったなぁ。 そう言えば……」 「わ、分かったよ、確かに間違った情報も少しは持ってくるけどさ」 キッドは少し、を強調したがディックの視線が痛かったのかすぐに言葉を続ける。 「今度は間違いないって!信頼できる情報だ」
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