31人が本棚に入れています
本棚に追加
――あれ?
なんだろう、死んだのか?
俺、空で一時停止してるぞ?
「おい!大丈夫か?!」
顔を上げると梗が居た。
俺の手をしっかり握る梗が。
でも梗じゃないかもしれない。
だって梗がこんな顔する訳ない。
「梗…何してんの?」
もう訳が分からなくなって
とりあえず聞いてみた。
「…上げるぞ」
ぶっきらぼうに言えば
意図も簡単に俺を引き上げる。
「え、何?梗も死んじゃった?」
力無く俺は笑った。
「馬鹿野郎」
梗の手が振り上げられた。
何ですか今度は暴力ですか。
俺はとりあえず目を閉じた。
やっぱ怖いじゃん痛いじゃん。
予想外だった。
振り上げられた手は
俺の頭を優しく撫でてくれた。
「よかった…」
梗―…?
なんで微笑んでんの?
なんでそんな優しい顔…
「…っ」
前が霞んで見えない。
頬に温かい何かが伝っている。
生きてて良かった。
笑顔が見れなくなるところだった。
あんなふうに驚いた顔も、全部全部。
最初のコメントを投稿しよう!