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「……ふぅ」
あれから何回目のため息だろう。一週間は経ったのに頭の整理が出来ていない。まあ、情けないような性格は前からだけど。
朝からため息しか出ない。初恋は実らないと言うけれど、あれはあんまりだと思う。
「そんなにため息をつくなよ。不幸を感じ取って魚が逃げるぞ」
おじさんが苦笑いをしながら言った。
今、僕たちは川のほとりで釣りをしている。僕はともかくおじさんは食べないと生きていけない。冬が近いから保存食も必要だ。
水が穏やかに流れて行く。釣り針と釣糸が獲物を狙って、川の流れに身を任せ、静かに揺れていた。日光が気持ちいい。
僕の心と反比例して空は青く雲一つない。静かな風が木の葉を揺らしながら去って行く。
「……そんなんで逃げる魚ならきっと美味しくないよ。根性なしで」
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